自費出版から商業出版への成功事例9選

はじめに

自分の経験やビジネス哲学を形にした本を出すことは、起業家にとって大きなチャンスです。特に、インターネットラジオやYouTube、インスタライブといったメディアに出演し、自分の商品やサービスの認知度を高めるには、「自分の本を持つ」ということが有効な武器になります。

しかし、商業出版のハードルは高く、出版社に依頼してもすぐに出版が叶うわけではありません。本記事では、特に「自費出版」を足がかりに成功を収めた事例を紹介し、その経緯や背景を解説します。自費出版がきっかけで商業出版、映画化、さらにはメディア露出を果たした成功例を知ることで、あなたも勇気を持って出版に挑戦できるでしょう。

『こころ』|夏目漱石

「こころ」は朝日新聞に掲載されていた小説です。この時点で、すでにベストセラー作家だった夏目漱石ですが、後に岩波書店創業者となる岩波茂雄氏に請われた「自費出版」を承諾。岩波書店が出版社として最初に出版した「こころ」は「箱、表紙、見返し、扉及び奥附の模様及び題字、朱印、検印ともに、悉(ことごと)く自分で考案して自分で描いた」とのこと。岩波書店は「こころ」の出版から大手出版社への一歩を踏み出したのでした。

『リアル鬼ごっこ』|山田悠介

小説を書くどころか、本も読むのも嫌いだったという山田悠介氏は、自らのデビュー作『リアル鬼ごっこ』を、文芸社の自費出版制度を利用して発表しました。
自費出版当初、文法的な誤りが多かったり、ストーリーの整合性がとれていないところがあったりしたため、批判もされましたが、物語の斬新な設定が若者の心を掴み、口コミで爆発的に広がりました。
その後、原作本は100万部を超え、それを原作とした漫画、映画、テレビドラマ、ゲーム作品なども多く発表されることとなりました。

『櫂』|宮尾登美子

宮尾登美子氏は46歳のときに、自らの経験や女性の心の機微を描いた長編小説『櫂』を自費出版で世に出しました。初版は500部と小規模なものでしたが、その繊細で深みのある描写が徐々に評判を呼び、口コミで話題に。多くの出版社から再版のオファーが舞い込み、最終的に商業出版が実現しました。
本作はその後、映画化され、さらに多くの人々に知られるようになりました。『櫂』の成功は、作家の後のキャリアに大きな影響を与え、「鬼龍院花子の生涯」などのヒット作を生む足掛かりともなりました。自費出版がキャリアの転機となった好例です。

『佐賀のがばいばあちゃん』|島田洋七

島田洋七が幼少期を過ごした佐賀での祖母との出来事を書いた自伝的小説。そのエピソードをきいた、ビートたけしが出版を勧め、3000部の自費出版から始まったとのこと。
2度の自費出版を経て、「徹子の部屋」で取り上げられ、大ヒット。関係する書籍は、累計400万部の売り上げを超え、映画、漫画、テレビドラマ、演劇にもなりました。

『Deep Love』|Yoshi

元は、Yoshiの個人サイトの掲載されていたケータイ小説。愛や孤独をテーマにしたストーリーは女子高生の口コミで話題となり、自費出版。出版直後から大きな話題を呼び、数ヶ月で10万部を突破。最終的にはスターツ出版から商業出版され、シリーズ全体で累計270万部を超える大ヒットとなりました。また、映画化や漫画化もされるなど、多方面に展開されました

『女子大生会計士の事件簿』|山田真哉

公認会計士資格等の予備校であるTACのフリーペーパー『TAC NEWS』にて連載。
本作は、山田真哉氏が手掛けた会計ミステリーで、自費出版から商業出版へと進んだ成功例です。当初は無名の存在でしたが、軽快な文体と独特な会計のテーマが若年層を中心に受け入れられ、注目を集めました。自費出版版の評判が口コミで広がり、その後、商業出版が決定しました。その人気の勢いはとどまらず、最終的にはテレビドラマ化されるまでに至りました。専門的で難解になりがちな会計を、ミステリーの枠組みでわかりやすく解説する手法が多くの読者に響き、企業研修の教材としても使われるほどの人気を博しました。

『斜陽の国のルスダン』|並木陽

元は、同人誌から自費出版された本。NHKのプロデューサーの目にとまり、「青春アドベンチャー」で採用されました。その後、ジョージアの物語を探していた宝塚歌劇団の演出家からオファーがあり、宝塚歌劇「ディミトリ〜曙光に散る、紫の花」の原作となり、それに伴い、商業出版されました。

『アイミタガイ』|中条てい

2013年の自費出版された短編連作集。2014年に斎藤緑雨文化賞長編小説賞を受賞している。
その後商業出版され、2024年11月、黒木華主演で映画化された。

『僕たちは世界を変えることができない』|葉田甲太

著者がカンボジアに学校を建てるため奮闘するノンフィクショ体験記。自費出版ながら5000部が売れ、その後、加筆修正され商業出版。2011年に向井理主演「僕たちは世界を変えることができない。 but we wanna build a school in cambodia.」として映画化された。

まとめ

紹介した成功例のように、自費出版から商業出版へ進んだり、自分のブランディングにつながったりすることは夢ではありません。

「自分の本を出すなんて、私には無理かも……」と思っている方でも、自費出版を通じて一歩を踏み出せば、きっと新しい世界が待っています。本はあなた自身のストーリーを伝えるツールです。それを手にしたとき、あなたの未来は大きく変わるでしょう。